かわいいは武器『お台場駐屯基地の妖精 ストライク・プリンセス 001』

地球に侵攻してきた異世界人と戦う機巧少女たちのお話。スカイガールズみたいな少女とメカみたいなのが好きなので買ってみた。キャラクターの設定や文章は綺麗だが、バトル描写が淡白、敵に侵攻されている緊迫感が薄い、逃げ道の多い設定があるなど惜しい内容だった。そんなことは気にしないという人にはさらっと美少女を楽しめる一冊かもしれない。

IMG_20140213_234835法則更新日(イノベーションデイ) 。10年前、世界の裂け目から現れた異界人(ストレインジ)と集落(コロニー)によって、人類は11日間蹂躙され続けた。東京湾に侵攻した集落のひとつが撃墜されたことで異界人による侵攻は終わりを迎える。集落を撃墜した人物の記憶は人々には残っていないが、その人物が使用した対抗手段が「機巧制服(コケティッシュギア)」である。少女達は体に機巧を移植し、日々集落から襲来する異界人に対抗していた。

このラノベの最大のポイントはとにかく妹の風早桜花(かざはやおうか)がかわいい。5歳の時から異界人と戦うことを運命づけられていた少女は一般世界の知識が本による知識しかなく、主人公であり兄である晴空(せいくう)を終始困らせるのだが、その困らせ方がかわいい。兄の存在を知っていながらずっと会えなかった妹という感じで重度のブラコンに陥っており兄にべったり。他の機巧士官(アサルトフェアリー)と仲良くなろうものなら全力で嫉妬する。すべてはこの桜花と晴空の関係を彩るパーツにすぎない。

それだけにこのあまり意味をなしていない設定が非常にもったいない。機巧制服は心を振るわせることでその威力を発揮するのだが、10年間東京への侵攻を防げていたことからさほど主人公が重要でない印象を受ける。もちろん主人公がいることで常にある驚異を排除できたというのは大きいが、後半戦にいたっては機巧士官のスペアみたいな扱いで完全に空気主人公ある。もう少し独自の設定であるこの機巧に深みを持たせられたら美少女アイアンマンみたいで良かった。

また、異界人の攻撃を受けると人はコンクリート、人工物は植物に変化するという設定は、異界人によって世界の法則が変わったためとされているが、この設定が便利すぎて後付設定を容易にしている。この機巧などのシステムも異世界人による法則変更の影響という設定。なんでも法則更新日の影響と言ってしまえるため、都合の良さが目立つ。これらの謎が今後解明されるようであればよいのだが。

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そして、もっとも残念なのが戦闘描写の淡泊さ。有利になったりピンチになったりする過程が薄いのでハラハラがない。後半戦の桜花のくだりは強引に山を作った感じで「えっ?」となる。これだけの装備設定と上のような挿絵の書き込みを行っているのにそれを生かすシーンが少ないというのは残念。異界人も強いんだか弱いんだか、ただの馬鹿なのか分からない。帯にある飛行戦記ものとしては少し物足りない。

文章はところどころに惹かれる内容があり、

『信じるだけでは叶わない。想うだけでも可能にならない。
 信じて想って行動して、初めて奇跡は起こるのだ。』

など端々に惹かれる文章がちりばめられている。こちらの方が得意なのかもしれない。

最後に、これはスニーカー文庫が悪いのかもしれないが、法則更新日、異界人、集落、機巧制服、機巧士官みたいなそのまま読まない単語は全部ルビを振って欲しい。読み方を忘れすぎて面倒くさい。

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