エーコと【トオル】と部活の時間。

エーコと【トオル】と部活の時間。

今年の電撃小説大賞金賞作品。

半年前に起こした事件によりクラスから孤立してしまったエーコは、積極的に関わり合いを持とうとするクラスの副担任の新人教師でエーコの所属する化学部の顧問である雪村真白を拒絶してしまう。次の日の放課後、化学部の部室で目の前にあった人体模型に話しかけると、ボイスチェンジャーのような声で人体模型がしゃべりだし、エーコと友達になろうとします。エーコは人体模型の正体を雪村先生と疑いますが、自分は人体模型の【トオル】だといい認めません。そんなヘンテコな部活動が始まってしまった矢先、エーコの目の前で女子生徒が自然発火する事件が発生、いちばん近くにいて容疑者と疑われたエーコは自然発火の調査を開始する。

少しネタバレで感想を。

エーコと【トオル】と部活の時間。

 

基本的に一人称視点ですが、エーコの正角がサバサバしているせかスッキリとしていて非常に読みやすかった。物語も重要だけどラノベはストレスなく読めることも重要。

最近流行のクラスになじめない系主人公で推理はキレるという折木奉太郎の女の子版といった感じ。

事件と言うことで推理ものにみえますが、本作の中心はいじめの被害者であるエーコが復習に燃えている犯人に対して、調査を通じてその復讐に意味はあるのか、幼なじみは喜んでいるのかということを問うているように思います。物語の後半のやりとはなかなか見応えがありました。

冒頭にも書いたけど物語の運び方が上手い。しゃべる人体模型といえばよくある学校の七不思議。そこから重要人物の登場に結びつけていったり、過去の起こった事件を出していったりする流れは上手いなと思いました。またアルキメデスの原理なども出てきますが、それが正しいかどうかは別としてメタファーとしては良くできていると思います。

事件のトリックについては、第一、第二の女子生徒が自然発火は移動する物体に使うには少し成功率が低い気がするし、第三の犯行についてはわりと金がかかっているなという感じで微妙なのであまり期待しない方が良いかもしれません。

結末はわりと後味が悪い。少しばればれだけど犯人の意外な協力者の存在は今後に繋がるのか次巻が楽しみです。

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